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イスラームの世界へ (5)

2012/09

聖地マシュハド / イラン


空港でビザ取得

欧米メディアでは悪者も、旅人の評判はいいイラン。米国に喧嘩を売る。イスラエルを敵対視する。従順な日本とは全く違う政治。ビザは空港で取れる。でもホテル予約書の提示を要求され困る。中級ホテルの名前を書いたら、そんなの知らないと拒否され不穏な空気に。泊まることはないけど、ヒルトンとか超有名なホテルを書くべきだった(笑)。
 
ビザ代は、50ユーロ。米ドルでないのが面白い。同じ飛行機に乗っていたクウェート人は40ユーロだった。街中ではユーロは両替が難しい。当然のように米ドルが外貨の主役。米国と敵対する国でも、ドルが流通する経済システム。どんだけ米国が嫌いでもコカコーラは飲む人々。

さて、空港で取ったビザ。入国してから数日後、異変に気づく。入国回数は「1回」、滞在期間は「15日」と問題ないが、有効期限が、9月9日から9月12日までとある。ペルシャ語の表記(数字だけは私も読める)も、期間は9月9日から9月12日まで。これって、15日間のビザじゃないのか? それとも9月12日までに出国しないといけないのか? 大混乱。

有効期限が、入国した日から15日後の、9月27日でなければいけないのに。取得時に確認してなかった。しかし、悩んでも仕方なし。シラーズからの航空券もあるし、15日間と書いてあるので大丈夫だと言い聞かせる。出国時に何かのペナルティがなければいいのだけど。。。  

出国の9月16日。 結果は問題なし。何も言われなかった。でも心臓に悪いよ~


両替ができない!

さて、国際空港のホメイニ空港ターミナルで現地通貨に両替しようと、1つしかない空港内の銀行にいくと、レートが、1ドル=12,200レアル。1ユーロ=15,700レアル。ゼロが多くてよくわからない。両替屋も見当たらない。

とりあえず、300ユーロを両替しようとすると、係員が怪訝な顔をする。本当に良いのか?と何度も聞いてくる。英語は通じないが、レートが悪いらしい。近くの人を呼びとめ、ここで両替するのはアホなのか確かめる。レートが悪いとは理解したが、市内へのタクシー移動、軽食代、できればマシュハドへの航空券代は必要。クレジットカードは使えない、ATMでのキャッシングも出来ないので、現金が必要なのだ。とりあえず、40ユーロを交換。

到着は夜の8時。ホテルには泊まらず、このまま国内線の空港へ移動して、翌朝一番の飛行機で聖地マシュハドに飛ぶプラン。ホテル代、時間、移動代の節約。

国際空港から市内まで、タクシーで、350,000レアル=30ドルは、ちと高すぎとの印象。混乱した。メダパニ。テヘラン中心部から40キロ以上離れた郊外にあるが、産油国でガソリンは安いので、感覚的には20ドルぐらい。固定料金みたいな感じで、ぼっている様子もないので納得。

国内線メフラバード空港では、翌日のマシュハド行きの航空券は入手できず。幾つかの会社が飛んでいるようだったが、いずれも満席。値段を聞いたら、790,000レアルと書かれる。うん? 空港のレートだと、7ドル。 違う違う。学習した。70ドルである。高くはない。

航空券は購入できなかった。次なる手段は、鉄道での移動。地球の歩き方には、早朝朝6時30分出発の特急列車(所用8時間)があると書いてある。駅への移動、朝食、切符代が必要なので、空港で両替を探す。国内銀行のATMはあれど、外貨両替をするとことはない。困った。困った。

でも、なんとかなるのが世界旅行。両替できずに困っている私に、一般旅行者が「私が両替しようか?」と申し出があった。レートは、1ドル=22,000レアル。あれ国際空港の2倍近い。どうやらこのレートが一般的らしい。そりゃ銀行員も止めるはずである。半分以下のレートで両替しようとする私を。このレートだと、空港からのタクシーは、16ドル。うん安い。航空券は、36ドル。えっ何それ?

後で知るが、イランの政情不安や国際制裁で、通貨暴落があった。急激なインフレ(年30%)の影響も有り。つまり対ドルレートも、一気に倍近く跳ね上がり、外国人旅行者にはパラダイスな状況。一方イランの人々は、自国通貨が激減で、国内で稼いでも紙くずになってしまう状況。

※ 数は少ないが、街には両替商があった。そこでは1ドル=23,500レアル。1ユーロ=29,500レアル。  店の前には闇両替人が立っている。空港などでレアルは両替できないので、通貨仕入れは重要。  市内で普通にUSドルやユーロが使えるかと思ったら、全然ダメである。振り返ると、国際空港にも闇両替屋さんがいたのかもしれないが、気付かなかった。


切符を買う!

国内線メフラバード空港から、鉄道の中央駅へ移動。値切ったら、白タクだった。相乗りだった。夜11時30分、深夜の駅。構内に人は少ないが、翌朝の便を待つ人などで結構、人はいる。きれいな駅である。表示もわかりやすいが、基本的に切符や駅の時刻表は、すべてペルシャ語で読めない。

駅や空港、外国人やバックパッカー旅行者はゼロだった。中国人、韓国人、フィリピン人、インド人もいない。現地の人に尋ねて、助けてもらうしかない。

親切な駅員ホセイン。マシュハド行きの列車は何便かあるが、朝6時30分発、14時到着の特急はキャンセル待ち。次々に来る人が名前を告げ、彼がノートに記載する。私の名前が書かれたときに300人ぐらいいた。最終的に400人のキャンセル待ち。朝5時ぐらいに、再販売があるのか、名前が呼ばれるらしい。外国人にはよくわからんシステム。ホセインや彼の同僚達と深夜、1時間半ぐらい雑談をした。

ホセインは、バレーボールをしていた。サッカーが一番人気と思っていたが、バレーボールも人気で、するスポーツとしてはイランで一番かもしれない。確かに街中で、友達同士で、バレーボールをする人達がとても多い。日本のバレーボールシューズは有能で、アシックスやミズノの製品を輸入して売りたいと夢を持っていた。イランにはバブル期に多くの労働者が日本に来ていたので、彼らがとても良い印象をもって帰国していた。日本を褒めてくれるのはとても嬉しい。

深夜1時。おしゃべりも終え、駅の3人掛けベンチで寝る。アルミ製。何百人が駅のベンチや床で寝ていた。治安が日本よりいいので、盗難の心配も少ない。私も3時間爆睡した。

朝5時40分。ホセインが私のために特急券を入手してくれていた。仲良し作戦は大成功。朝6時。特急列車がホームに入ってきたので、列車に向かう。

ホームにはエレベーターがあり、最高! ただし列車には、3段の段差があり。他の乗客に声をかけ、車いすを担いでもらう。

特急列車に車いす席はないが、通路も広く、座席も大きい。非常に快適。座席はもちろん満席に。価格は330,000レアル(15ドル)。飛行機の半額弱。7時間半の旅。普通列車も何本か走っており、昼に出て夜中につくらしい。そちらは値段も安く座席も違うのかも。

朝食と昼食付き。最高の列車旅。イランの主食パンは、薄いクレープのようなもの。インドのチャパティに近い。とても美味しい。どこでも酢漬け野菜ピクルスがついてくる。野菜が多いのは、健康のため、ビタミン補給のため、有難い。

テヘランから東へ800キロ。アフガニスタン、トルクメニスタンとの国境付近にある聖地マシュハドに到着。駅にエレベーターがあったが壊れていた。仕方なく、ホームの端にいき、貨物や業務用の出入口から外へ。

苦労して、マシュハドに到着。問題は、脱出方法。ホテルを探す前に、イラン航空のオフィスに行って、航空券を購入した。これまた満席ばかりだったが、なんとか、深夜のテヘラン行き、翌朝のエスファハーン行き。2つの航空券を購入。合計1,371,000レアル(60ドル)と、定価だがとても安い。でもまた空港で寝ることに。


いざ、ハラム(聖廟)へ!

聖地マシュハドには、イラン国中から、めちゃくちゃ多くの人が巡礼(旅行)に来る。毎日が正月。お祭り。土産物や商店も活気で溢れる。ホテル、民宿、アパート、巡礼宿など、何万人もが宿泊。

ホテルは200件以上(でも階段ばかり)、アパートも100件以上、巡礼宿舎も100件以上はあるだろう。泊まるところは無数でもペルシャ語ばかり。外国人が泊まれそうなところは限られる。苦労して、歩いて歩いて、10軒ほど実際に部屋を見て、私もホテルを探した。

私は無宗教(自然崇拝)だが、どの宗教も敬意を払い尊重する。郷に入りては、郷に従え。この旅行中はムスリムになった。動機は単純。現地の文化風習に触れたい。もちろん聖地にも入ってみたい!

聖廟のあるハラムは、約600メートル四方の大きさ。幾つものモスク、礼拝所、美術館、広場、聖廟があり、途方もない広さ。24時間無休。東西南北すべてから入れる。昼寝する人、勉強する人、祈る人、散歩する人、色んな人が入り乱れる。入口にはセキュリティチェックがある。荷物は預けなければならない。カメラ持ちこみと撮影禁止。とはいえ女性などポーチを持参したり、携帯電話は持ちこむので、写メを取る人がいたりする。

セキュリティチェックでは、「アフガニスタン人か?」と聞かれた。車いすだから、負傷兵と思われたのかもしれない。調べるとアフガニスタンの人口の2割がシーア派なので巡礼者もいるのだろう。前日に髪の毛を切ったマシャドの床屋では、「パキスタン人か?」と聞かれたので、どうやら現地人化には成功した模様。

車いすで入れるのか不安だったが、無用な心配。1000台以上の貸出車いすと、電動カートが置いてあった。長距離歩行が大変な高齢者やその家族が気軽に借りていく。当然、内部は段差解消がされている。100台以上の車いすを見た。脊髄損傷やポリオの車いすの人もいた。皆がお祈りをしたい。バリアフリーな聖地に感動!素晴らしい! 

大理石の床はピカピカ。雨のときは水はけが良いだろう。青い制服を着た職員がささっとゴミを掃く。ミッキーマウスはいないけど、ディズニーランドみたいな感じ。美しい建物、厳かな空気、高揚する人々。居るだけで幸せな気持ちになれる場所。

午後の礼拝。何千人と一緒に(ハラム全体では何万人)お祈りをした。モスクには何度も入ったことはあるが、本格的に礼拝をしたのは初めて。礼拝前に前後の幅を整え、左右は密着して、整列をやり直すことを初めて知る。中学校の朝礼のだらだらとは全く違う。自発的に全員がささっと動き、揃えていくのは壮観である。

礼拝の方法は、イスラムどこでも同じだが、礼拝の呼びかけ時などに、イラン特有の祈りの方法がある。男性は(男女別なので、女性のことは見れないが)、右手で左胸(心臓)を叩いて、おじぎをしながら祈る。胸を叩く音が響いて、一種異様な昂揚感が醸成される。

皆が整列して、一斉に同じ動きを取る、集団性の統一感は迫力満点。野球やサッカーの応援で声をそろえるのと同じ興奮だった。 

最深部の聖廟にも突入してみた。金ピカ、ガラス玉、鏡張りの空間。ここは天国か、神の世界か。光が幾重にも反射し、シャンデリアの中みたい。異空間。残念ながら写真はない。撮影禁止。でも私の心には決して忘れることのない聖地の輝きがある。申し訳ないが、実際に訪れないとこの感動は得れない。

おしくらまんじゅう。ふんずもぐれつ。御神体に触れるべく、押しあい圧し合い進むが、残り1メートルで断念。夜に出直すことにした。

ホテルで昼寝。レストランでビュッフェ夕食を食べて、もう一度聖廟ハラムへ。23時。ライトアップされた聖地に再入場。むむむ、昼より人が多い。終わりかけの夏の夜。涼む人が集まるのだ。泊まる人もいるのかな?何をするわけでもないが、美しい聖地で家族や友人とのんびり過ごすイラン人。とても幸せで平和であった。


イランの食事

乾燥した高原というイメージも、国土は海から山、森から砂漠まで多種多様。商店には、数多くの野菜や果物が並ぶ。

イランのチャイハネ(カフェ&食堂)で食べれる地元民のランチ。アゴーシュ。ぐつぐつのシチュー(豆とじゃがいも、肉など)に、ちぎったパンを入れて食べる。具をつぶしてごちゃ混ぜに。インドのカレーに近い感じですね。お腹にも優しい。ボリュームたっぷり。

ケバブ。串焼きもお世話になるでしょう。チキン、マトンなど。香辛料は少なくシンプルな味。ルコやウズベキスタンに比べるとスパイスが利いてないので味は落ちる。レストランでは、炒めた肉もあります。付け合わせにトマトやキュウリの酢漬けは定番。


サンドウィッチやピザを売るファーストフードは多いのですが、レストランは街中に少ないので探すのに苦労する。地元旅行者やビジネスマンは、ホテルで食事をとるのが基本みたいである。ツアー客はいわずもがな。食事付き(ビュッフェ)の宿泊パックも多いみたい。


マシュハド LRT (地下鉄メトロ)

街を歩いていると、地下鉄を発見。エレベーターもあるではないか! 車イスマークも有り!2011年完成。新型都市交通。LRTです。車両は小さい路面電車。半分は地下、半分は地上を走ります。将来的には、空港にもつながるので、とても便利ですね!

全駅完全バリアフリー。ホームと段差の隙間。ほぼゼロ。段差もなし。最高っす。車内も清潔。広い。安全。安心。

切符は基本的に売店で買う。3000レアル(約10円)。2枚買って、6000レアル。7000レアルを出したら、お釣りは紙幣ではなく、ガムだった。笑ってしまう。少額紙幣は少ないし、お釣りは返ってこないことが多い。

夜の飛行機。ホテルはチェックアウトしたので、日没まで公園で過ごす。緑が多くて気持ちがいい。地元民はゴザや絨毯を広げておしゃべりや昼寝。遊園地(夕方から営業)もある。ベンチで昼寝。平和な時間。

ただLRTの駅はバリアフリーなんだけど、公園とつながる部分が未整備。スロープへのアクセスはガタガタ道。自動車やバイクの侵入を防ぐために、溝や柵があるから。線のバリアフリーはこれから。

イランのバリアフリー。興味深いのは、スロープの形状。大理石で作られているため、雨のときなど滑ります。その滑り止めがあるのです。ギザギザ。車いすだと、ガタガタと不快なのですが、杖の人や歩行者が滑らないようにするための工夫。面白いですね。


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