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友を訪ねて三千里
(2)

2000/12 - 2001/01

ルクソールから、カイロへ / エジプト


自称ガイド

王家の谷や古代の神殿が並ぶ、エジプト観光のハイライト古都ルクソール。
タクシーを1日借り切って一気に観光することにした。

空港からのタクシー運転手と、翌日に100バウンド(3000円)の契約をする。
しかし、夜に街を歩いていると「もう観光はしたのか?タクシーは予約したのか?」と声をかけられた。

冗談のつもりで「明日80バウンド(2400円)で既に契約しているから」と断ると、
自称ガイドは「70バウンド(2100円)で行ってやる」と言ってくる。
かなり迷うが、既に約束していた運転手の交渉が強引だったため、心変わりすることにした。私も悪人である。

自称ガイドは「ビジネスだから最初の約束を破棄するのは問題ない」と言う。
平気で裏切れという男のタクシーに乗るというのは、私も平気で裏切られる可能性があるということ。
それでも、1000円安くなることに魅力を感じる。でも、安くなった分はチップをせがまれることになる。。。

自称ガイドは「父も障害があるので、君を放っておけない。助けたい」とも言う。
調子いい言葉には裏があるので、気をつけねばと心を引き締める。
「君が一人で観光するのは大変だから、若い衆を一人、君の介護人でつける」と続ける。
言い換えると、一人分チップが増える(彼にもマージンが入る)のだけど、
車いすの私にとって、遺跡は段差も多く大変なことが多いので、介護人がつくことは非常に助かる。

翌朝、待ち合わせ場所に行くと、車がない。
私を見つけるると、自称ガイドは、路上を走るタクシーをいきなり止めて交渉を始めた。
すぐに交渉は成立し、英語が全くわからないおじいちゃんの運転するタクシーで出発することに。

タクシー運転手には、50バウンドしか支払わないだろう。
差額の20バウンドは懐に入れるのに違いない。手配料だと自分で自分を納得させる。

 

 

王家の谷の入場券は、自称ガイドが買いに行った。代行してやるという親切にみえるが、真意は別にある。
半額の学生割引チケットを購入する一方で、私からは一般大人の入場料を貰うのだ。
入場の際、私にはチケットを絶対見せなかったので断言できる。
私は童顔ではあるが、既に28歳。係員に「本当に学生か?」と聞かれて、必死に説明もしていた。
癖のあるガイドだなと思いながら、一緒に遺跡をまわったが、極めつけの出来事が起きた。

壮大で美しい女王の建築物ハトシェプスト葬祭殿を案内し終えた後、ちょっと脇道にそれた。
そこで、うんこ座りをして「以前ここに水路があって、水が流れていた」と説明した。
と、その瞬間、本当に液体が少し流れだした。
黄色い液体。ガイドの尿だった。

おしっこを終えた後は「ぷー」とオナラまでこいた。
用を足しながらも、訳のわからない片言の英語で「昔、ここに水路があってナイル川から水を引いていた」など説明する。隣に私がいて、平気で話をしながら、おしっこをしていた。
 ちなみに、エジプトの伝統衣装は、首から足首までスッポリかぶれるワンピースなので、かがむと下半身が自動的に隠れる仕組みになっている。いちいちトイレのたびにズボンを下ろす必要がない。座ればすぐに用が足せる。
 


車いすを押してもらいながら、ハトシェプスト葬祭殿を見終えた後、少し脇道にそれた。
自称ガイドは、かがみながら「以前ここに水路があって、水が流れていた」と解説する。

と、その瞬間、本当に水が流れてきた。よく見ると、

用を足した後は、「ぷー」とオナラをこく。
ワンピースの民族衣装は屈めば、どこでもトイレが出来るのだが、
ガイドをしながら、冗談を交じえながら、人前で恥じることなく堂々と小便をするのには恐れ入った。
すごい根性。すごい神経の持ち主だ。開いた口が塞がらなかった。

このエピソードを、数日後に会うことになるジブチで青年海外協力隊で友人に話したら
「ジブチの子どもたちも平気で路上でうんこをしながら話すでー」と平然と言っていた。 
世界は広い。


カイロへ

ルクソールを1日観光したその晩、予定を切り上げて、夜行バスでカイロに向かうことにした。
バスは、飛行機の10分1の値段で安い。また、ホテル代も時間も節約できる。
2泊するといったホテルを、1日半の料金を支払ってチェックアウトした。

バスの中では、ひたすら寝ていた。なにせ12時間もかかるからだ。
そんな爆睡の途中、たまに目を覚ましたとき、バスガイドのおばちゃんが、
ひたすら「ティー? コーヒー?」と声をかけてきた。
何度も何度も、タイミングよく私が目を覚ましたときに、聞いてくる。不思議だった。

彼女には英語が通じない。どうしたものかと思ったが、
寝ている間にほかの乗客にサービスが行われたのかもしれないし、
シリアのバスでは茶や飴のサービスがあったので、無料であることを確認し、ティーを頼んだ。

すると、頼んでもいないクロワッサンが付いてきた。
小腹が減っていたのでそのクロワッサンを食べた。そしてまた寝た。

夜が明けかけていた。強い日差しに目が開く。
また、タイミングよくおばちゃんが私の席に来た。「10バウンド(約300円)、 OK?」と料金請求をしてきた。
No money と、きっちり確認していたのに。

英語が通じない振りをしていたのは、アカデミー女優顔負けの演技だったのだ。

英語がわからない振りをして、お茶を飲ませて料金を請求する。
詐欺だ。「もう絶対、エジプトのバスでお茶は飲まんぞ!」と、このとき強く誓う。

西欧人の行動に多いが、サービス(親切)は受けないようにすれば、トラブルに巻き込まれない。
しかし、それだとハプニングにも出会わないおもしろくない旅になる。
日本人は人を信じやすいというのか、どんな人も比較的偏見なく接するのでボラれやすい。

おばちゃんには、10バウンドは余りにも高いので、7バウンド(210円)にマケてもらった。
実勢価格は2バウンド(60円)もしない。授業料だと納得して支払うことにした。
エジプトを個人旅行する誰もが悩むことだろうが、エジプト人の金のこすさだけには参る。

朝の7時にカイロに着いた。ギザのピラミッドなど観光した後、旅行代理店に行くと、
その日の夕方に「イエメン行きのエジプト航空の飛行機」があるというので、そのチケットを購入した。

出発まで少し時間があったので、ツタンカーメンのある考古学博物館を見学した。
ミイラを見たりして、考古学博物館を堪能した後は、そのまま飛行場に直行。
ところが、この飛行場に向かうタクシーも大変だった。史上最高にアホな運転手だった。 

きっちり、十分なお金を払って空港へ行くようお願いしたのだが、
夕方のラッシュに重なっていたので、カイロの中心街でタクシーを拾えない人を次々と乗せていく。
目的地が同じ方向で、空港に行く途中に降ろして行くのだろうと余裕を持って静観するが、
どうもまっすぐ空港に向かっていないようである。

私には時間がない。考古学博物館でミイラを見すぎて長居したせいで出発が遅れた。
とにかく飛行機に遅れるのは許されない。

アホなことばかり車内で話しながら次々と相乗りをさせる運転手に対し、私以外の乗客も呆れ顔だった。
ついには、私の心配をする乗客が出てきた。ある乗客は降りる際、親切にも私に英語で助言してくれた。

 「この運転手は良くない。急ぐなら危ないぞ。この運転手だと間に合わないかもしれない。
 君はタクシーを変えるべきだ。さもなければ、絶対に相乗りさせないことだ」

ようやく冷静になれた。
以後、彼にはガイドブックを見ながらのアラビア語で、「まっすぐ空港!」「急げ!」と言い続けた。

相乗り同乗者がようやく消えて、中心街を抜けたころでも、
この運転手は、車をふらふらさせ、タクシーを拾おうとして歩道に立つ人に近づく。
そのたびに、私は、「だめだ!」「まっすぐ空港!」「急げ!」と言わなければならなかった。
なんか幼稚園の先生みたいだった。

何が起こるか本当に分らない。なんとか飛行機に間に合ったからよかったものの寿命が縮まる。
分刻みのエジプト旅行の最後を締めくくる出来事だった。


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