米国留学 報告書(6)
2002/09 - 2003/08
バークレー CIL 自立生活支援センター
Center for Independent Living Berkeley バークレーといえば、障害を持つ人、特に重度の障害を持つ人の自立生活発祥の地。その数々の業績は伝説となっており、障害を持つ人が住みやすい街として世界的に有名である。日本でも、生まれもって障害をもつ人や、その親が、バークレーに対し憧れをもっており、聖地となっている。毎年100名以上の日本人が、CILバークレーに視察にきている。 カリフォルニア大学バークレー校前の名物通り「テレグラフ・アベニュー」を5分ほど下ったところに、CILバークレーはある。受付は電話がいつもなりっぱなしで、訪問者も多く、とても忙しい。
その歴史は、1972年に始まる。1973年の、リハビリテーション法504条を受けて、障害を持つ人の権利も強くなり、バークレー市の支援を受け、1978年には、年間予算320万ドル(約4億円)、職員200名になった。 しかし、1980年代の米国不況を受け、年間予算80万ドルに激減。職員も28名になった。数々のサービス部門が独立していったこともあるが、財政を行政にだけ頼っていたのが問題だった。この教訓を得て、民間からの寄付など、独立した資金を作るようになる。2002年の年間予算は200万ドル。46名の職員がいる。
CILバークレーのサービスを受けている人は、年間2400名。バークレーから始まったCILは、現在カリフォルニア州で30ヶ所、全米で400ヶ所、設立されている。 CILには、障害を持った人が多く働いている。職員の65%が様々な障害を持っているとのこと。規則にも、51%以上、障害を持つ人が運営に加わることとなっている。設立当時から、障害を持つ人の雇用の場としての役割も強く、数多くの障害を持つ人が働いた。両手両足のない人、呼吸器が常に必要な人、全盲、脳障害、どんな人でも受け入れている。多くの人が、CILで実績を積んだ後、新しい仕事に移ったり、一般企業で働いたりしている。NPO団体なので、給料が安い。多くの報酬を求め、それができるなら当然のことである。 CILのサービスは、障害を持つ人なら誰でも受けられる。それがたとえ外国人であっても。私も住宅相談すればよかった。知らなかった。住民証明や障害を証明するもの(障害者手帳は米国にはない)なんてのも必要ない。自己申告。 また、CILは、すべての障害に対応しているので、非常にユニバーサル。各障害ごとでの交流も多く、日本での障害が違えば交流が少ない環境とは違っている。設立当初は、肢体不自由だけだったのが、すぐに領域を広げていって全てに対応するようになった。 当然、設立当時から、全米から障害を持つ人が、このエリアに集まり、サービスもどんどん増え、バークレー市の財政負担も大きくなってきたのだが、市は、それをむしろ歓迎している。障害を持つ人が自由に暮らせる市として誇りを持っているのだ。もちろん一部の住民は、福祉に多額使われることを良しとしないが、大多数は好意的だとのこと。本当、バークレーには、色んな障害を持つ人が住んでいます。 CILバークレーが抱えている現在の問題は、住宅、就職支援、そしてお金。 私もこのエリアでの住宅探しの大変さは、身を持って体験したので、よくわかる。市から派遣された専属の住宅探しカウンセラーも働いている。年間800名が相談に来る。障害を持つ人が住むことができる特別な住宅リストも存在するが、毎月、公募される借主募集リストからピックアップし、貸主と相談して探していくという。バークレーは全米の他の都市と比べ、とても古い街で住宅には階段があることが多い。よって、必要なときは、スロープを作ったり、リフトをつけたりする。その費用と設置はCILが無料でする。日本と違って、貸主が障害を持つ人が住むことを拒否するのは法律で禁じられている。それでも問題がある場合は、CILが法律相談に乗り、貸主と交渉し、必要なときは提訴する。 この地域の、障害を持つ人の失業率は、73%。やはり就労というのは、大きなネックになっている。低収入の場合、住宅、医療、福祉器具などの優遇があるので、無理して働かない人もいるという。日本と違い、米国は低所得者層向けのサービスとして、障害を持つ人も含まれている。もちろん、CILでも就職の紹介を行っている。企業側からの相談も多く寄せられる。障害を持つ人の就労環境を整えるときセミナーを企業に向けて、有料で行ったりもする。 相談で多いのは、勤務態度に問題がある場合、それが障害によるものなのか、個人によるものなのか、障害を理由に解雇はできないので慎重になる。もちろん、遅刻や課題達成をしないのはあきらかに障害ではなく、個人の問題なので、解雇である。 お金は、どこの組織でも、いつも問題になることですね。無尽蔵に寄せられる要求にこたえるには、やはり財政的なものが不可欠になる。CILで巣立って、収入を得て自立した人から、寄付がされることも多いとのこと。
※いろんな質問に答えていただいたジェラルドさん。ありがとうございました。
Overview 概要
Personal Assistance Service (PAS) 介助サービス
Independent Living Skill 自立生活スキル
Housing 住宅探し
Peer Support Services ピアサポート(個人相談)サービス
Employment Services 就職サービス
Information and Referral 情報と照会
Benefits Counseling 享受される社会保障の相談
Individual Advocacy 個人主張
Blind Services 視覚障害サービス
Deaf and Deaf/Blind Services 聴覚障害、盲ろう障害サービス
Youth Services 若年層サービス
Client Assistance Project (CAP) 依頼者への手助け
System Advocacy 制度に対する弁護
Assistive Technology (AT) 補助技術
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