2006年 福岡市の3番目の地下鉄として、2005年に開業した七隈線。優れたサイン、完全バリアフリーな導線、ユニバーサルデザインの見本となる、非常に素晴らしい施設です。 地下鉄の入口は、すべて緑色で統一。高齢者にも、子どもにも、知的障害の人にも、視覚障害の人にも、わかりやすいですね。エレベーターのある入口近くの看板にはマーク。これなら地下鉄へのエレベーターがどこにあるか探し回る必要がないですね。
出入口には、必ずエレベーターかエスカレーターが設置。「入る」は青色。通行禁止は赤色。「出る」は黄色です。文字だけでなく、色や記号による表示の統一は素晴らしいです。エレベーターのボタンも手前にあり、車いすでも押しやすい。 また白杖の人は、磁気テープを先につければ、エレベーター手前の誘導ブロックのセンサーが反応し、エレベーターのボタンを押さなくても、自動的にエレベーターが呼ばれてドアが開かれます。とっても良い技術です。
エレベーターの中では音声案内が完備され非常に丁寧な案内がありますが、ちょっとうるさい感じがしました。上か下か二方向しか移動がないので、「ホームです」「地上です」などのみの簡素で短く小さい音声案内で十分だと思います。 また、全駅が同じエレベーターではなく、メーカーが違うものが混在。ボタンの位置や表示が微妙に違います。もちろん個々でみれば、バリアフリー対応の使いやすいエレベーターなのですが、同じ型のほうが理想ですね。公共事業なので複数業者を採用しなければならないのかもしれませんね。
点字ブロックと、車いすが相反することがありますが、七隈線では、導線を極力、すれ違わないように配慮していました。どうしても車いすが点字ブロックの上を通るところは、車いすが通れるように隙間が作られています。新しいアイデアですね。 階段も弱視の人や高齢者が段差を認識しやすいように、階段の先端を色づけしています。手すりも2つの高さです。開放感のある採光と照明、透明素材の多さも重なり、圧迫感のないデザインになっていますね。素晴らしい。、
駅案内図には、赤字でバリアフリー経路が書かれていました。これは親切ですね! 触知図です。大阪モノレールのように、ホームからコンコースへのエレベーターの中にも経路があれば、より嬉しいです。サインの位置は、すべて車いす利用者と立位の視点の中間1350mmを基準として設置されています。専用装置(手のひら大)を保持していれば、各所で音による案内がされるようにもあっています。
公衆電話。使われることが少なくなりましたが用意は必要です。車いすでも使える高さ。足元もスペースあり。配慮されています。自動販売機までもが、コイン投入口、取り出し口が、中間の高さのバリアフリー使用。徹底されていますね。
改札やトイレは曲線のデザイン。緑色でわかりやすく、遠くからでもよくわかります。車いすでも通れる広い改札も完備。また、導線上の分岐点(改札、階段、エスカレーター、ドア開閉口など)では、ダウンライトの照明。周囲との違う印象を演出。 駅構内にあるトイレです。みんなのトイレという呼称で、バリアフリー対応トイレが用意されています。2つもありました!全ての駅の統一デザインです。1つで十分かと思います。その代わり、各男女のトイレ内部の最深部に、車いすやベビーカーでも入れる、ゆったりとしたトイレを作ればOKかと。ならば車いすで使用可能なトイレが合計3つとなります。
みんなのトイレ内部は、とても豪華でした。九州の企業「TOTO」さんの製品がずらり。大人用のベッドや、オストメイト(人工排泄)も全てに完備。このように豪華な設備のトイレは、1つあれば十分かと思います。 トイレ横にボタンが多くて困ってしまいます。視覚障害の人、外国人には大きなバリアですね。何でもつければいいという考えで、シンプルさ、単純さという概念は欠如しています。モノはシンプルなものこそ使いやすいです。メーカーはこのような豪華な設備を標準化、ユニバーサルデザインと称していますが、コストやスペースが過剰すぎます。
ホームに続くエレベーターは改札の近く、ホームの中央部に統一。車いす対応車両(椅子がなくスペースがある)が、エレベーターの近くに停車するように統一されています。 駅の表示も識別が非常にわかりやすいです。ピクトグラムで各駅ごとにマークと色があります。壁素材も各駅ごとに違います。マークでの表示は福岡の地下鉄に特徴的なもので、駅の数がそれほど多くないから実現可能となっています。子どもや知的障害の人が、象さんの絵の駅という風に認識することができます。東京や大阪では、M1駅というように、アルファベットと数字でも駅表示がされています。外国人にわかりやすいですよね。
転倒防止のために安全策があります。透明ですが高さがあるので、車いすの視線では圧迫感があります。壁の広告が見えにくかったりしますが、安全を考えると、仕方がないですね。 電車とホームの段差は、完全バリアフリーです。日本でやっと登場しました! 悪しき慣習からの脱却です。隙間も極力なくすように工夫がされています。約5センチ。完璧ですね。嬉しくなってきます。同時に、通常は微妙に凸になっているホームも、完全フルフラットを実現。雨はないので排水は関係なし。掃除道具にも工夫。 利用したときに、ベビーカーのお客さんを3人も見ました。ママさんにも優しいデザインで素晴らしいです。欧州のように、車いすだけでなく、ベビーカーマークも貼ったらどうでしょう? バリアフリーの対象者を拡げるのです。
車内は小さいです。2メートルの背があれば天井についてしまう。椅子も小さいです。開放感を演出するためのデザイン工夫が諸所にみられます。文字表示もたくさんあって情報のバリアフリーもバッチリです。
人々の知恵と叡智が結集された素晴らしい地下鉄でした。4両編成のワンマン運転。本来は3分間隔にしたいようですが、7分間隔。本数が多いのは利用に便利ですよね。非常に優れた交通システムなのに、既存駅と連結していないのがとても残念です。博多駅につながれば最高なのですが。。。 施設(ハード)は素晴らしいのですが、サービス(ソフト)は良い印象を持ちませんでした。というのも、車いすの私が一人で乗ろうとすると、駅員が私を呼びとめ「どちらの駅に行きますか?」と尋ねてきました。「どこに行くか言わなければならないのですか?」と問い合わせると、「安全のために聞いています」「私の仕事です」と言います。車いす一人でも、手助けなく何の問題もなく利用できるのに、なぜ駅員に行動を監視されなければいけないのか?「車いすの人は降りる駅を言わなければならないという規則があるのですか?」「規則なら私は伝えます」と応えると、駅員さんは、怒りだし、語調が大きく「私の仕事です」と言います。規則ではないようなので私は降車駅を伝えませんでした。 降りる駅でも、改札で駅員に呼び止められました。「お客さん、どちらの駅から来られましたか?」との質問。「どこで乗ったか言わなければいけないのですか」と応えると、「いえ、いつも車いすのお客様は連絡が来るので、今は連絡がなかったので不思議に思ったものですから」とのこと。この駅員さんは、あっさりしていて、乗った駅を伝えたくない私の意思をすぐに尊重し、立ち去りました。 車いすのお客様は、助けられなければいけない存在なんですね。そうならないためのデザインがされていると思うのに。手助けしていただけるのは有り難いことなのですが、本人が手助けを希望しないなら、その意思を尊重していただきたいもの。決めつけないで欲しいです。心のバリアフリーになって欲しいです。 こちらの写真は、新幹線の博多駅の車いすトイレです。豪華ですねー。大きなベッドも用意されていました。専用トイレで、男女の間にあるのですが、一般のトイレには段差があり、車いすでは入ることができません。別に、車いす=車いす用トイレを利用する ではありません。もしそうなら街を歩けませんよ。先客がいることもあるだろうし、化粧直し、手の洗浄など排泄行為以外でもトイレは利用価値があります。スペース的にも、コスト的にも、段差解消が簡単なのに、障害者専用トイレを作れば、バリアフリーはOKというのが残念です。
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