米国コロラド スキー旅行
2001/03
NSCD (全米障害者スポーツセンター) 「きーじーさん、スキーはしないのですか?」 それは一通のメールから始まった。米国、コロラド州のロッキー山脈で働く、スキーアメリカ まうさんから届いた。全米障害者スポーツセンターという素晴らしい組織があります。私は、そこでボランティアをしているが、ぜひ来て下さいと書いていた。 実は、車イスになって最も悔しいことは、スキーが出来なくなったことであった。だから、スキーをしている人を見るのが嫌で、暖かいところしか旅をしていない。シットスキー(座って滑る)の存在は知っていたが、長野パラリンピックを見るまでは、あんなに早く綺麗に滑れるとは思っていなく、過小評価をしていたので挑戦をしていなかった。 でも、パラリンピックを見て意識が変わった。早速、シットスキー挑戦してみることにした。しかし、調子に乗って滑っていた初日、大きく転倒して右ひじ脱臼。緊急手術もした。1ヶ月、片腕だけの生活になり悲惨を極めた。車イスもこげない生活は想像を絶っした。もう、無茶は止めようと決意した。3年前の話である。 ところが、メールによれば、米国には種類も多く、簡単に安全に滑れるスキーもあるそうな。ボランティアがしっかりついて指導もしてくれるそうな。また、挑戦してみよう。血が騒いだ。 NSCDには、全米はもとより世界中からハンディキャップのある人々が集まってきます。NSCDの活動は今年で30周年を迎える歴史があります。30年前に、23人の切断障害を持つ子どもたちへのスキーレッスンを始めたのがきっかけでした。障害者のスポーツセンターという組織において、世界最大規模のものということです。 NSCDでは、1年を通じて様々なスポーツプログラムが用意されています。冬季はアルペン+クロスカントリースキー、スノーボード、スノーシューによるハイキングなど。夏季はマウンテンバイク、ハイキング、キャンプ、フライフィッシング、ラフティング、目の不自由な方のためのロッククライミング、乗馬、インラインスケートなど。多種多様です。その活動を支えているのは、50人の常勤スタッフと、約1000人のボランティアスタッフです。 ボランティア休暇や週末を利用して、実に多くのボランティアがNSCDを支えています。まず、人ありきのシステムになっており、素晴らしいです。また、視覚障害、切断障害、脊椎損傷、脳性麻痺、ダウン症、ガン、多発性硬化症、聴覚障害などどんなハンディキャップにも対応できるプログラムが組まれています。 誰もが、スキーを楽しめるところなんです! SKI for ALL !! 年間約3000人ものハンディキャップのある人がレッスンを受けるそうです。私がいた日でも、シットスキーだけで20名ほどレッスンを受けていました。レッスン料は、道具レンタルとリフト代も含めて、90ドル/1日、45ドル/半日です。すっごい賑やかで活気があります。 ホテルから、スキー場へは、ADAシャトルが送迎してくれます。えらく年季の入ったバスです。これは、ずいぶん昔からバスが存在していたことを証明しています。つまり、ハンディキャップのある人がスキーを楽しめる環境が昔からあったことを意味しています。ここにも歴史を感じます。 風を切る感覚 緊張の初日。大きな力強い男性二人がボランティアについてくれた。二人のスキーの腕前はプロで、私を押して自由自在に進む進む。緩斜面では、勢いをつけて直滑降。飛んだり跳ねたりジェットコースターみたいだった。リフトにも、二人が横について、私を持ち上げて乗せてくれる。極楽浄土。 私は3年前に モノスキー(一本板)で大ケガをしているので、今回は、簡単に滑れる バイスキー(二本板)に挑戦した。スキーを楽しむためにコロラドまで来ているのだから、こけてばっかりになるのは嫌だったからだ。 モノスキーは独立性が高く、上達すれば自由自在に滑れるが、欠点は非常に難しいこと。バイスキーは独立性は低いが、安定していてこけにくい。いずれも、体重移動と手の使い方(アウトリガーというのを持つ)がポイントとなる。
ボランティアの二人は、また指導もプロで、大きなジェスチャーで指示を与えてくれたので楽しく学べた。さらには競技コースで滑らしてくれもした(後ろで綱を持ちスピードコントロールしてくれる)。 右! 左! 顔を上げて! 深く右! 深く左! こっちを見ろ! 力を抜いて! よく出来た! 今でも彼らの声が思い出される。 DUO SKI に挑戦 二日目。バイスキーも滑りこなせるようになってきたので、午後からはレベルアップして、ドゥオスキーという最新式のものに挑戦することにした。 ドゥオスキーは、モノスキーとバイスキーの中間ぐらいとの説明だったが、限りなくモノスキーに近い感覚で、私にはめちゃくちゃ難しかった。ちょっと体を傾けてしまうとすぐこけてしまう。スピードコントロールも難しい。 何回こけたか忘れてしまった。ある斜面では、スピードが出すぎて止まらなくなり、林につっこみそうになったので、必死にターンをしたがとまらず、ふかふかのパウダースノーに突っ込み、体が1m近く埋もれてしまった。 ドゥオスキーは難しくて楽しむ余裕がなく、特訓練習になってしまった。最後になって山を降りるときのコースでなんとなく感覚をつかんたが、スピードコントロールできない。ボランティアの女性も必死になって綱をもってくれた。 ENJOY SKING 最後の3日目。 バイスキーに戻して、思いっきりスキーを楽しむことにする。この日は、スペシャルでボランティアが3名ついてくれた。今回の旅行の恩人 まうさん も一緒だ!そのまうさんの提案で、山の頂上に行きましょうということで冒険だ。 このスキー場 ウィンターパークは本当に広い。高い。3つの山の高さは、それぞれ 3261m、3261m、3414m。 街の高さも 2743m あります。さらにその奥には、森林限界を超える頂 3676m があります。下の写真に映る奥の山です。 なんと、富士山とほぼ同じの高さです。 さすがに標高が高いので、3414m地点に行くと、頭がガンガンして高山病に襲われました。しかしながら、その景色は最高です。スキーコースも延々と林の中を駆け抜けて最高なので、頭の痛みも吹っ飛びます。 山の頂に行くには、ある程度の実力、道に迷わないこと、時間に余裕があることが必要となります。いつの日か、てっぺんに行くことを夢見て、スキー上手くなろう。 雪用の車イス NSCDで働く車イスの人や、地元の車イスの人々は、車イスのタイヤを雪上使用にしていました。マウンテンバイクのタイヤを使っているとのことです。めちゃくちゃ固くて、太くて、パンクなんて絶対しないような代物です。地面との接地面も大きいので、雪に埋め込まれることもないのでしょう。 2年後・・・ 米国バークレーに留学中の2003年2月に、再度ウィンターパークを訪問した。 レッスン4日目にして、夢だった山の頂きに。そこからの滑降は格別だった。夢を一つ完遂した。 2週間、毎日すべっていたら、完全にモノスキーをマスターした。ヴェイルのスキー合宿も勉強になった。 |