歩けない人は乗せれません!
2002年 5月29日(水) 12時20分の出来事
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* さらにひどい、バニラ航空 奄美路線での搭乗拒否 2017年6月 *
伊丹空港の搭乗カウンターで、全日空 成田行き NH3112便 の搭乗手続きをしようとした。すると、いきなりカウンターの女性は、「歩けますか?」と尋ねてきた。ぶしつけな聞き方だ。「お体の状態を尋ねて良いですか?」と、まず尋ねるのが親切。最も適切な尋ね方は、 "How can I help you ? " 「どのようにお手伝いすればいいですか?」である。 日本では使われないですが。 「歩けるか?」と聞かれれば、下半身不随の私は「歩けない」と答えるしかない。だけど、自分のハンディキャップをあからさまに言葉に出すのは、やはり気分が悪い。「歩けません」と、私は答えた。すると、カウンターの女性は、「歩けない方の、お一人での搭乗は、この便では出来ません!」 と言った。言葉を失った。続けて言う。「この便は小さい飛行機で設備がありません。予約の際に連絡はありませんでしたか?」 そんなことは知らない。一ヶ月前に、全日空のホームページから、GET28 伊丹-成田-サンフランシスコの往復券を購入。自宅に搭乗券が送られてきたが、そんな記載なんてなかった。今回の渡米は、人生を左右する転機になるだろう、先方との留学交渉。ようやく取れたアポイント。とにかく私はこの飛行機に乗らなければならない。 私は、改めてカウンターの女性に言った。「さきほど歩けないと言ったのを訂正します。私は歩けます。 自分一人で搭乗できます。歩けないから、搭乗できないのでしょ?」 手を使って歩ける。これが私の論理だ。別に、助けてもらえないのなら、助けはいらない。這ってでも乗ればいい。 「設備がない」という理由で断るが、誰も設備が必要だとは言っていない。設備があるにこしたことはないが、なくても乗れないということはない。現に世界中の空港を利用しているが、設備のないところはたくさんある。どんな田舎の小さい空港、どんな小さい飛行機でも乗れなかったことはない。いかようにもやり方はある。重要なのは、彼らが乗せる気があるのか、ないのか、ということである。いかようにも対応ができる。 ※参考: このときまでに、世界73の飛行場と32の航空会社を利用してきた。 すると、「あなたはバスケットボールをしていますか?」 と尋ねてきた。「なぜ、そのような質問をするのですか? 搭乗に関係ないので答える義務はありません」と私は言った。カウンターの女性は「腕力があるのか尋ねたかったのです」と答える。バスケットをやっていることが腕力と関係あるのか? 飛行機の搭乗と関係あるのか? これまた車椅子の固定されたイメージでを押し付ける。侮辱している。 別に手助けしてもらおうとも思わない。一人で乗って一人で降りれば問題ないだろう。しかし、歩けない人の単独での搭乗は、規則であるのか乗せれないらしい。新たな理由を持ち出してきた。「事故があったときに助けれないので、お乗りになることはできません」 この理由を聞いたのは何回目だろう。車椅子を拒否するときに使われる、反論をさせてくれない言葉である。ホテルでも、火事や地震があってエレベーターが止まったら助けれないのでとか、断る理由をつけられる。誰かと一緒に飛行機に乗ったとしても、その付添い人に何かをしてもらうことはない。飛行機を乗る行為において、私がすることは何も変わらない。介護者がいるのといないのと、何が違うのだ? 乗っている間に介助が必要な人はいるだろうが、それは個々の事例であって、障害者を一律に「何もできない人」と決めつけないでほしい。 また、もし事故があったら助けるのが乗務員の仕事ではないかと、私は思う。著書「空飛ぶ車イス」にも記述したが、ノルウェー美術館で案内してくれた男性は、「事故があったら俺が助けるから安心しな」と言ってくれた。入り口に階段のあるホテルのフロント女性は、「私達がいるからいいじゃない。人が助けたらいいだけじゃない。何の問題があるの?」と言ってくれた。このような精神は、この航空会社にはないのだろうか。 設備がないというので、飛行機がどんな機種なのか尋ねた。機体から、そのまま階段が出てきて、滑走路から直接、乗るのだそうだ。なーんだ。そのような飛行機には何度も乗ったことがあるじゃないか。 ・ チュニジア航空 ジェルバ島 - チュニス
それぞれに乗せ方があった。しかしただの一度も乗れないことはなかった。この伊丹空港の場合での、最善の搭乗方法を提示してみた。機内用の小さいアイルチェアーに私が乗り移り、前後でそれを持って、6段ほどの階段を一段ずつ上げていけば良い(下の写真を参考)。方法を伝えたが反応はなかった。
これまで10年間、全日空を利用しているが、予約の際に「車椅子」であることを伝えたことはない。批判もあるかもしれないが、言う必要もないと考えている。私が飛行機の乗るときにお願いしたいことは、ただ一つ。座席に乗り移るときに、機内の通路は狭く、自分の車イスは通らないので、アイルチェアー(廊下椅子)と呼ばれる機内用の小さな車椅子を用意してもらうだけである。 アイルチェアーは空港に置いてある。また航空会社によっては機内に常備している。私は、トイレの介助だとか、食事とか、座席の工夫とか、何にも頼まないし、必要ない。置いてあるアイルチェア-を利用させてもらうだけであるので、現場で対応できるレベルなので、わざわざ予約の際に、車椅子であることを伝える必要がないと考えている。 今まで、全日空を利用するときに、車椅子であることを伝えていなくても、いつも何の問題もなく搭乗できるのに、どうして今回はダメなのか? 粘り強く交渉する私に、カウンターの女性は悩まされていた。 ・・・・・ 30分後。 なんとか乗れるようになったみたいで、慌てて案内される。案内先では「申し訳ございませんでした。ご搭乗できますので、ご安心ください」と謝罪。他の乗客と一緒にバスに乗って、滑走路に着いた。伊丹空港で、タラップ搭乗ブリッジを使わないなんて始めての経験である。
なるほど。このような飛行機か。やはり思ったとおり。何度も乗ったことのあるタイプだ。交渉のとき、この飛行機は、フェアリンクという会社が運行するコードシェア便、等々、全日空の言い訳があったが、全日空便として予約しているので、こちらには関係ない。 私が乗りこむ番が来た。係員は助けるというが、最初に「乗せない」と言われているので、助けなんていらない。それに、私は一人で乗ると言った。実行してやる。また、助けるといっても、おんぶして担ぐと予想され、おんぶされる経験豊富な私は、その人が、おんぶで担ぐのは無理で、途中で崩れ落ちたりするだろうとも予想された。 さて、車イスを階段の横につけた。階段に乗り移り、一段ずつお尻を上げて、足を乗せて、登っていく。登りきったら、床をすりながら座席まで移動。そして床から、座席まで這い上がる。座席は配慮で最前列だった。周りの乗客は、しーんと見ていた。私の隣には、フェアリンクか全日空か職員が座っていた。単独での搭乗は認められないので、職員をつけることで乗れるようにしてくれたのだろう。 成田空港に着いた。降りるときも、床をはって階段を一段ずつ降りた。階段を降りた先には、自分の車イスが用意され、それに乗り移った。そして、ターミナルに向かうバスに乗ろうとすると、なんだ、このバスは?
階段のある飛行場のバスなんて、はじめて見た。一般の乗客も乗りにくいはず。日本の首都空港で、この有り様とは情けなくなった。 成田では、4名の係員が待ちうけていた。なんだか物々しい。そして平謝り。申し訳ございませんでした。 どうかご勘弁くださいと、そして、「帰りの飛行機は一便ずらしていただけませんか?」と頼まれた。それは困る。サッカーワールドカップ イタリア×エクアドル戦のTV放送に間に合わないじゃないか。イタリアファンの私は、帰りも自分で乗り降りするので、同じ飛行機に乗ると言った。 ・・・・・ 6月3日(月)、成田に帰国。 伊丹に向かう飛行機を遅らされることなく、予定通りの飛行機に搭乗。同じように、自分で床をはって乗り降りし、隣に職員が座っていた。ここでも謝罪があった。 それは真摯に受け止め、私は尋ねた。 「今後のこともあります。それで車椅子一人で飛行機に乗れるのですか?乗れないというのも会社の方針として結構ですが、その情報を開示すべきです。『この便は、お体に障害のあるお客さまの単独搭乗をお断りすることがあります』と書いてください」とお願いした。職員は「今後検討させていただきます」 とだけ応えた。 就航したばかりの路線 私が搭乗した 伊丹-成田 線は、2002年4月18日にオープンした成田空港の新滑走路を使う路線。なぜ、車椅子対応や高齢者対応を考えず営業を開始したのか非常に疑問である。 そして、関西経済の停滞を象徴する関空の国際線発着の減少。全日空も成田新滑走路オープンで、関空から成田にシフトした路線もある。関空で乗れなくなり、成田を利用せざるを得ない状況もあるのに利用できないなんて。 論点 第1の問題: 単独歩行のできない人の搭乗を認めていないことを開示していないこと。 第2の問題: すべての人が飛行機に乗ることができないこと。
全日空のホームページを見てみましょう。(2002年6月10日転載)
この搭乗拒否については、正式に「要望書」として、全日空に提出しました。
~ 上記文責 2002年6月12日 木島英登 ~ 搭乗拒否の経験 1995年 日本。マレーシア航空予約の際、車椅子単独での搭乗をとがめられた。 2000年 香港にて、深夜発の関空行きの便が、乗務員少ないとの理由で朝の便に変更してくれと頼まれた。 2000年 日本。アリタリア航空にて、予約の際、車椅子というと搭乗拒否。 2001年 関空。KLMオランダ航空、カウンターで単独での搭乗拒否。大きなハンドサイクルがあったのも影響。 これらの経緯もあって、余計なトラブルを避けるため、車椅子であることを告げない。食事や機内でのトイレなど、機内での介助が必要なときや、規定を超えた大きな車椅子や電動車椅子がある場合は、航空会社に伝えるべきだと思うが、私の場合は、アイルチェアー(機内用小さい車椅子)の用意だけである。現場レベルの対応で十分と考えているから事前連絡は必要ないと考えている。実際に、乗ることの多い 伊丹-羽田 では、普通の乗客のように利用してます。 香港の一例を除けば、搭乗拒否されるのは、いつも日本である。海外では一度もない。同じ航空会社でも日本支店、日本の空港でだけ搭乗拒否にあう。同じ会社でも人や国によって考え方が違うのであろうか。設備の何もない空港も世界にはたくさんあり、そんな場合でも搭乗できないことは在り得ないし、何も言われない。なぜ日本だけといつも思う。不思議です。 |
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