台湾旅行
2000/03
キューバに行ったときに貯まったアメリカン航空のマイレージ。 台北のバリアフリー 初日にぶらぶら歩いていて思った。「なんて歩きやすいんだ」 その勘は当るもの。車イスで非常に旅行しやすいところだった。なぜ、そんなことを感じたのか。歩道にスロープがついているのだ。バイクが多く、歩道に駐車するためでもあるが、その数は多い。舗装が悪く、ガタガタになっているところも多いが、滑らかにスロープがつけられているたりする。 台北の町並みは建物の1階がコリドー(ボローニャの街並が有名)になっている。つまり建物の1階部分がへこんでいて歩道にもなっていて雨に濡れない構造である。このコリドーの部分は商店が入っていて、その前は高さが違っていて段々になっているがコリドーの外に、正規の歩道があり、そこはバリアフリーで段差がない。 また、デパートやショッピングセンターの入口にスロープがあるではないか。よく見ると銀行にはスロープがある。ないところにはインターフォンが。この辺りは日本と同じ。違うのは日本の歩道の場合は、縁石があって、1、2cm程段になっていて危険なのだが、基本は滑らかに作られているところ。交差点の大きいところは、地下道や歩道橋となっているが、信号も多かったり、交通整理の警官もいたりするので大きな道路も渡れないことはない。極めつけは地下鉄だった。
数年前に建設され、いまも路線拡大中である台北の地下鉄が素晴らしい。障害者だけでなくすべての人に使いやすいユニバーサルデザインである。最新の技術と、利用のしやすさを追求した世界でももっとも優れた地下鉄でないかと思う。 私が、利用したのは4つの駅だが、すべて完璧であった。他の駅にもエレベーターがあるのが車内から見れたので全ての駅に完備されているのだろう。
道路から、ホームまで、エレベーターで降りれるようになっている。デザインもすっきりしている。特に改札からホームまではシースルー(透明)エレベーターで開放感が感じられる。ベビーカーを押しながら乗ってくる人も非常に多くみられた。年配の方の利用も見られた。そして、改札も、車イスが通れるように広いのが一つ設けられている。 トイレも一番奥の一つが、車イスにも使えるトイレになっているアメリカ式のバリアフリートイレ。これこそが、ユニバーサルデザインだと私は思う。日本のように障害者専用の豪華なトイレを作るのでなくて、車イスでも使えるトイレが一つはついているのが理想である。障害者だけでなく老人も、ベビーカーも、大きなかばんを持つ人も利用できるのだから。
専用トイレだと、利用者が少ない問題もあって、作ったのはいいけれど、倉庫に変わっていたり、ホームレスが住みついたり、汚れたり臭くなったりしているのが見られる。使われないと意味がない。最近「どなたでもお使いになれます」と表示され、日本でも障害者専用トイレの感が薄れつつある傾向にあるが、場所も別に設置するのでなく、普通のトイレの中に一つ作って欲しいと願う。
男性用トイレの中のユニバーサルトイレの中に、おむつ取り替え台がついていた。ベビーカーの人も使える。これは、男女の社会的役割のバリアフリーですね。 他にも素晴らしいところがいっぱい 台湾の地下鉄 車両も素晴らしい。ホームと車両の間に段差がないようフラットな作りに車両はなっている。考えてみると意外なんだが、ホームと車両に段差がない電車は少ない。日本の電車では、ホームと車両に段差があり、いつも乗る度に近くの人に手助けが必要である。うーん恐るべし台湾の地下鉄。。。 車内は、座席が少なく機能的に作られている。広く感じれる。ドアも大きく、乗り降りがしやすいように設計されている。地下鉄なので乗車時間が短いので座席数が少なくてもいいのだろう。そして、表示も素晴らしい。 駅に降りて「エレベーターはどこかな」と探すと、1秒でわかる。青いエレベーターマークの絵表示が常に掲げられている。路線も色で識別されており、自分が何線か色でわかる。トイレの表示もエスカレーターも出口も、分かりやすい。目の不自由になった老人にも、外国人にもわかりやすいユニバーサルなデザインだ。
もうひとつ、おまけに環境問題も考えているのかなと思った。すべてがよく見えてきてしまう。トイレの芯をうまく利用して使っていた。単なる遊び心かな? 台北でバリアフリーが進んでいる理由(私見)
台北の地下鉄がユニバーサルデザインだという理由に、新しいからというのは的確でない。日本の新しい駅も施設はあるが、ユニバーサルデザインまではいっていない。ここまで徹底して作れるのは、町並みも見ても思うのだが、障害者団体の運動のせいか、市民の意識が高いのか、何か理由があると思う。 なぜ、こんなに台北でバリアフリーが進んでいるのか、何か理由があるはずだ。何か政治的な力がないと、ここまで進んだバリアフリーは実現できない。 台湾旅行からの帰国後すぐに、第10代大統領に陳水扁氏が選ばれた。貧しい農村の出身で、ごく一部の外省人(大陸出身者)が経済の実権を握る中、内省人(台湾出身者)として苦労の末に大統領になった。彼は、1994年から1998年までの4年間、台北市長を勤めていた。そのときの政治手腕は高く評価され支持を集めたという。 その第10代大統領陳水扁氏の夫人、呉淑珍さんは、1985年「政治テロ」ともいわれる交通事故により、車イスの生活となった。大統領選挙の間、集会には常に夫人の呉淑珍さんの姿があり、対立候補からは、夫人を選挙に利用していると中傷されるくらい夫婦の仲はむつまじい。また、それは陳水扁氏のイメージアップに確実に貢献している。 すなわち、台北でバリアフリーが発達している理由の大きな要因は、辣腕を振るった元台北市長の夫人が、車イスだからである。しかも、政治的なことで車イスになったというのもある。ちょうど素晴らしいユニバーサルデザインの地下鉄が出来始めたのも、陳水扁氏が、台北市長を勤めていた時期とも重なる。
アメリカでバリアフリーが進んでいる理由の一つに、ベトナム戦争での退役軍人(多くの人が車イスになった)を選挙でないがしろにするわけにいかず手厚く保護してきたということと、彼らが積極的に行動を起こしたことがあげられる。 故宮博物館 写真で見ていた故宮博物館の入口には、長い階段が映っていた。入れるのかなと心配に思いつつも、階段しかなかっても観光客が多いだろうから、担いでもらったらいいやと、例のごとく呑気に行く決断をしていた。 しかし、台湾に来てからバリアフリーが非常に進んでいると感じていたので、市内から故宮博物館に向かうタクシーの中では何の心配も消えていた。 タクシーの乗降場は下の麓にあるのだが、階段を上って入口までいかなければならないので、タクシー進入禁止の看板を無視して、故宮博物館の入口の目の前まで連れていってもらう。階段の裏が入り口になっていた。 肝心の故宮博物館の中身ですが、あんまりエキサイティングじゃない、というのが感想。芸術というより文化を学ぶところ。時代によって陶磁器のデザインも代わったり、交易の影響を受けたりするのは面白いです。工芸的であったり、技術的な部分が強く、芸術性が欲しいところです。 バリアフリーが非常に進んでいる台湾だが、故宮博物館にも、障害者用トイレがあった。ここは、地下鉄のようなユニバーサルデザインでなく、障害者専用のトイレ。古くに作られたものだと感じた。ちなみに、ドアは日本みたいに、触れると自動で開く扉であった。 |