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奄美大島 ゼログラヴィティ 清水ヴィラ

2016年

奄美大島に完成した、話題のバリアフリー・マリンリゾート、ゼログラヴィティ「清水ヴィラ。オープン直前に行ってきました。私の住む大阪からは、伊丹空港からJAL直行便が毎日就航。羽田、成田、福岡、もちろん鹿児島からも便があります。失礼ながら、奄美空港は小さくて搭乗ブリッジがないかも?と思っていたら、立派な空港で、搭乗ブリッジも1つあり。伊丹、羽田、成田からの便は大きな飛行機で、搭乗ブリッジを使うので車いす利用者にも安心です。

問題は、航空券の価格かな。海外に行く方が安いという場合もあったりしますが、そこは仕方なし。安い時期の航空券を選んだり、早めに予約したり、マイレージを使うなどがお薦め。LCCのバニラ航空が、成田から就航し、価格がとても安いですが、車いす乗客に対して優しくないのが問題で悩ましいところ。

奄美空港から、迎えの自動車で、リゾートへ移動。距離にして70キロあります。2時間ぐらいかかる。飛行機が朝到着、夕方出発とかでないと、移動でそれぞれ1日とられるため、最低3日間は休みをとって行くのがいい。

空港は島の一番北。リゾートのある瀬戸内町は、島の南端。奄美大島というぐらいで、かなり大きいんですよね。島の北側は波が高く、サーフィンが盛ん。南側は穏やかな海があり、ダイビングが盛ん。

リゾートに到着。加計呂麻(かけろま)島との大島海峡を望む海は静かでとてもキレイ。清水(せいすい)というのは集落の地名です。清らかな水があるというのも納得の美しさ。

ヴィラに着いて、まず感心したのが、砂利道に敷かれた穴あきマット。車いすでも歩きやすい!細かいところに目が届いてます。
機材を運んだり、洗ったりするので、水はけの良い砂利は必要。でも砂利は車いすの敵。それを、うまく共存。芝生部分にもマットは敷かれており、車いすでも歩きやすい。

客室は、1階にツイン4部屋のみ。小さな宿です。その4部屋はすべてバリアフリー。単純に車いす8名が宿泊可能。貸切なら、庭にテントを張って寝てもいいとのことなので、車いすの人が10名でも泊まれますねー。すごい!

ヴィラの前は、海。そこにプールがあります。こちらで、ダイビングの練習をすることになります。天気が良ければ、こちらのデッキでお茶をしたり、読書したり、夜空を眺めながら、夕食を取ることも可能です!

客室です。シンプルな作り。ここは5つ星、4つ星の豪華リゾートホテルではありません。その快適さを求めてはダメ。

富豪の別荘に来た感じ。。。

ベッドのマットも固いし、尿漏れとか失敗したときのために汚れマットも敷いてある。とても眠りやすい。目覚まし時計、冷暖房、除湿器、電話、もちろんインターネット無線LANも完備されており、アメニティもバッチリ。電気を消すボタンもベッド横にあるので、いちいち車いすから乗り降りしなくても大丈夫。ベッドも動かせるので、壁につけたり、2つを引っ付けてダブルベッドにすることも可能です。フレキシブル。

部屋のバスルーム。驚きました。シンプルで、国際標準! 日本のビジネスホテルなど、全てこのデザインを真似したらいいと思います。必要最低限で、使いやすい。バスタブはありません。バスタブを設置するとお金も場所もかかりますから。それに世界のバリアフリールームには、バスタブではなく、シャワー椅子が基本なんです。それが実現。

障害のある人、車いすユーザーのマリンリゾートの拠点にしたい!というオーナーの考え。ビーチ車いすが2台。ボートが1台。3名乗りの水上バイク。もちろんダイビングの機材、ウェットスーツなど、道具もバッチリ。

ヴィラから、ビーチまでは徒歩1分。堤防にスロープがあります。海岸へもスロープ有り。傾斜が急で、路面も悪かったりしますが、贅沢は言えません。車いすでビーチアクセスができることは有り難い! ヴィラからも、ビーチ車いすに乗って、海へ入ることができます。船に乗ってダイビングをしなくても、珊瑚の海が見れます!

事業で成功したオーナー。完全バリアフリーのマリンリゾートを作ってくれるなんて、尊敬です。オーナーが若い時に買いたかった自動車「トヨタ S800」もあります。事業に成功して手に入れたそうな。格好いい!素敵なヴィラを作り、趣味のモノを置く。すごいなあ~ 

部屋には、テレビも有り快適ですが、大きさは広くありません。その代り、テラスや食堂など共用スペースが充実。テラス席で、風にあたりながら、くつろげます。自然な風が心地良い。

食事は、柔軟に対応してくれます。テラスでのバーベーキューが基本かな。

空調の効いた室内でも、食事や歓談も楽しめます。大きなテレビがあるので、そこでテレビやビデオを見たり、音楽を聴いたりすることもできます。その他、共用部分にも広いバスルーム(トイレ)があり、部屋以外もバリアフリーがきちんと考慮されています。


正直。バリアフリーの完成度は非常に高いです。満点です。細かいところにも配慮がされており、自宅より快適。もし私が、7億円の宝くじが当たって、夢のホテルを作るなら、清水ヴィラのようになるかも。4つ星、5つ星ホテルの豪華さや、快適性、非日常性は得られませんが、シンプルで居心地がいいところ。最高です!


シュノーケリング

2泊3日の滞在。その中日に、皆で船に乗ってシュノーケリングへ。港に停泊するクルーズ船へと移動します。ワゴン車と、ワンボックスカー。座席が降りてくるので移動も簡単。残念ながら、車いすのまま乗降できるリフト車はありません。電動車いすの人は、手動車いすに乗り替える必要あり。

奄美大島の南、瀬戸内町は「クロマグロ養殖日本一のまち」。近大マグロもこちら。でっかいマグロの看板が港の目印。

ゼログラビティ所有のバリアフリー大型クルーズ船。浮き桟橋ではなく、固定桟橋からの乗り込み。船からスロープが出てきて、車いすのまま簡単に乗船できます。通常は担がれたりして乗ることが多いのですが、これだと安心。ストレスがありません。

船内のスロープ。甲板や、前方、後方と、移動可能。テレビのある休憩室にも入れる。車いすのまま入れる、ゆったりトイレ&シャワー室もあり。充実した設備に感嘆してしまう!

特筆すべきは、船内のリフト昇降機。甲板からそのまま海へ入ることができます。船底は左右2つの長細い形。中央部分が空洞になっており、そこにリフトが到着する仕組み。海に入ったら、船底から出ないといけませんが、十分な空間があり、泳いでも出れますし、バディ(介助者)の誘導もあり。

 

写真のように、リフトが動きます。海から上がるときも、上半身は海から出るような位置でリフトが停止され、簡単に船へ戻れます。船首にもスロープ。船尾にも入水できる低いデッキがあり、リフトを使わないで、入水することも、もちろん可能。

 

海の中の撮影は、素潜りが得意な人魚姫 「マーメイドAI」 さんからの提供。沢山の種類の珊瑚がいます。本当に多くの熱帯魚が泳いでいます。時には、海亀やエイも見られるとのこと。

美しい奄美の海。動画をご覧ください。素潜りでの撮影です。

 

私の泳ぐ姿を撮影してくれました。水泳は得意なんです。世界中でシュノーケリングをしています。ウェットスーツを着ているので、浮力が高いです。体も太いので、トドみたいかな。笑。

 

シュノーケリングポイント。ヴィラ(黄色の建物)が見える場所にあるサンゴ礁の台地。初心者のダイビングポイントも兼ねます。
泳ぎが得意であれば、海岸から泳いで来ることができます。午前中、私はこの近くまで泳いできて、海を楽しみました。そのときはウエットスーツは無し。海パン一丁。

ヴィラのオープンングスタッフとして来ていた、冬季パラリンピックのメダリスト上原さん。海なし県の長野出身ということもあってか、全く泳げません。足のつかない深い海への恐怖も有り。そんな人でも大丈夫。補助がつくので、シュノーケリングを楽しむことができます。誰でも海を楽しめるなんて、素敵!海水を飲まないようにだけ注意して、力を抜いて浮いていれば良し。ウエットスーツを着ていれば、浮力で勝手に浮きます。

シュノーケリングを終えて、夕日を眺めながら、海峡をクルージング。他に船は一つもなく海を貸切。なんとも贅沢な時間。泳がなくても、この景色を眺め、海風に触れ、新鮮な空気を吸いこむ。大勢で来るならお薦めの夕方クルージング。お忘れなく。

 

港に戻ると、潮位が変化しており、少し段差が発生。船が高いこともあれば、低いこともありますが、道具を使って対応。訪問日は、新月で大潮だったため、3時間程のクルージングで1メートル以上の潮位変化がありました。自然の驚異。


鶏飯(けいはん)

奄美大島の名物料理といえば、鶏飯です。空港の近くにある「ひさ倉」でランチ。具を乗せて、鶏ガラスープをかけて食べます。鶏肉のスープ茶漬け。鶏肉のひつまぶしといった感じ。

商売繁盛の人気店。社会還元もバッチリ。店内に、車いすが入れるトイレも有り。素晴らしいですね。


観光

ダイビングだけ、ガッツリするという人もいるでしょうが、せっかくの訪問。観光したいという人もいるでしょう。清水ヴィラから、さらに奥に行った島の端に、隠れ家リゾートホテル「ザ・シーン」があります。

ラブラブのカップルで来たら最高でしょう。二人だけの秘密の時間。奄美大島の瀬戸内町は、芸能人やセレブなども、お忍びで多くの人が訪れる場所です。

 

全室オーシャンビュー。素敵なホテル。ここに1泊、清水ヴィラに2泊とかするのも有り。同行者はこちらに泊まるとかも有り。ただし、「ザ・シーン」の部屋は、中に段差があり、車いすでの滞在は不向きとのこと。

今回は訪問できませんでしたが、ヴィラから車で20分のところに、マングローブの森をカヤックする公園があります。60分1500円と、安いです。別途入場券が500円。カヤックは、下半身麻痺でも楽しめるアトラクション。


まとめ

最高の海。また行きたい! お世辞じゃなく本当に!部屋は完璧。ビーチアクティビティのバリアフリーも完備。文句なく、車いすユーザーのマリンアクティビティの聖地となり得る場所です。問題は価格ですよね。皆さん。。。

基本プランは、2泊3日か、3泊4日のオールインクルーシブ(食事、アクティビティ、全てコミコミ)。その代金は、安くはありません。でも、2人の介助者がついてのダイビング。単純に2名の日当が発生します。ボンベなどの各種機材、船を出すのもお金がかかります。空港も遠いので、その送迎に時間と労力が割かれます。価格が高くなるのは、仕方がありません。宿泊施設や設備はオーナーの心意気で大丈夫ですが、働くスタッフの人件費、施設の運営費は稼がないといけません。

安心して楽しめる設備とサービスですから、

・ ダイビングを初めてする人
・ 過去にダイビングをしていて、障害を持って再スタートしたい人
・ 一人でも来たい人、同行者がいない人

などに、超お薦めです。もちろん車いすダイバーの皆さんにも。

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ところで、私は車いすになって2年半後、大学受験に失敗して、その浪人生の夏休みに、沖縄の伊江島でダイビングを6本しました。父の友人がダイビングが大好きで、下半身麻痺でも楽しめるだろうと、父は私のためにダイビングを始めて、免許もとり事前に潜りにいったりして、道筋をつけてくれました。私と父とは仲が良かったわけではないので、ダイビングへは友人と行きました。それが受傷後、初めての飛行機でした。24年前のこと。。。その1年後に、米国へのホームステイで世界旅が始まりますが、考えると沖縄ダイブ旅行の経験が自信になって、世界旅へとつながったとも言えます。

何もないところから、車いすの人がダイビングをするのは簡単ではありませんが、奄美のゼログラビティ「清水ヴィラ」では、それが可能。これは金銭には変えられないものです。

正直なところ、ダイビングをするのはお金がかかります。そこに障害は関係ありません。私の場合は、世界旅にお金と時間はつぎ込まれたので、ダイビングを本格的にすることはありませんでした。でも、泳ぎが得意なので、世界の海でシュノーケリングを楽しんできました。よって、私の場合は、宿泊だけで満足。シェフの料理が美味しいので1泊2食付き。ビーチ車いすを借りて、自分達で海を泳いで楽しみたい!

空港への送迎を頼むと大変なので、自分でレンタカーして移動する。「うさぎレンタカー」という会社は、1日3000円という値段で借りれます。車いすユーザーも携帯用手動装置をつければ運転できますから。そうすれば、旅行費用はかなり抑えられると思います。他に宿泊客がいて、船を出すのであれば、少し料金を負担して、一緒にクルージングに連れていってもらうとか、ダイビングしている横で勝手に泳ぐとかも有りかなと。図々しいですけど。

・ 家族に車いすユーザーがいる人
・ ダイビングまでは経験しなくていい人、シュノーケリングで十分な人
・ 自分で行動できる旅慣れた人

そういった人達は、宿泊だけにして、オプションでマリンアクティビティをするのが良いと思います。ヴィラのメインはダイビングをするお客さんなので、スタッフの労力はそこに充ててもらって邪魔はしない。レンタカーをして、自分達で移動をして過ごす。それでも1度は、完全バリアフリーのクルーズ船で、夕日のクルージングを楽しんでください!

夏のオンシーズンだけでなく、冬のオフシーズンの滞在も有り。泳ぐことはできませんが、鯨やイルカを見ることができるそうです。大島紬の体験や、観光名所もあるので、のんびりと南の島で過ごすのも有り。宿泊だけの利用。それは直接交渉してください。


2017年再訪

1年後。友人を誘って、に再訪しました。格安航空バニラエアーが、関西空港と奄美大島の路線を開業。週末利用で、往復1万円と安いので、気軽に友人を誘えたというわけ。ところが、初めてのバニラ航空の搭乗がトラブル。 前年の訪問は伊丹からのJALでした。

チェックインカウンターで、階段の搭乗タラップの写真を見せられ、歩けますか?と聞かれ、歩けませんと返答したら「乗れません」の一言。昇降車などの設備がないのは理解できるが、担いだりのお手伝いはないみたい。同行者が人いるので「同行者の手伝いのもと乗降する」というので説得して搭乗。奄美空港では、同行者が私の車いすを取りにいき、人の同行者に車いすを担いでもらって階段を降りました。  

滞在は最高。前のビーチで泳いでいると、運よく、海亀を見ることができました。人生2度目の海亀との水泳。天気がよく、夕日クルージングも美しかったです。

そんな良い思い出もフイになることが発生。帰りの奄美空港。チェックインカウンターで空港の車いすに乗り替えて欲しいと言われる。
階段を担いでもらうのには自分の車いすが簡単なので、できるなら自分のを使いたいと返答したら、困った表情。すると15分ぐらい待たされて、ようやく回答が。往路に車いすを担いで降りたのは違反
だったらしい。今回は認められない。

飛行機に乗れないのは翌日の仕事にも差し支えるし、何より帰宅できないのは、非常に困る。「同行者のお手伝いのもと、階段昇降をできるなら」でという条件で搭乗が認められました。

搭乗タラップの前、同行者が車いすを持ちあげて乗ろうとしたら、ダメ!と身を乗り出して静止。仕方ないので、階段に座って、一段一段、這って登ろうとすると、それもダメだと言ってきますが、無視して上っていきました。同行者は私の足首をもってお手伝い。途中でキャビン・アテンダントが手伝うと駆け下りてきました。機内には折りたたみの小さい機内用車いすが有り、飛行機のドアの前でそれに乗り移り、座席へと移動して、大阪へ戻ることができました。

まさか、「歩けないことを理由に飛行機に乗れない」とは思っていませんでした。15年前に、ANAで搭乗拒否されて依頼のこと。

障害者差別禁止法が施行されている、東京オリパラに向けてバリアフリー化を推進しようとする動きの中で、合理的配慮も何もない、こんなことがあることに驚きを隠せません。

今後のために、奄美空港の責任者に確認しました。「歩けない人単独は完全NG」。「車いすを担ぐのはNG」。同行者のお手伝いのもと、階段昇降をできるならが条件とのことです。差別ですが、それが解消されない限り、嫌な思いをするだけなので、JALで行ってください。ご注意を!


意義申し立てによる解決

バニラ航空の搭乗拒否。障害者差別禁止法に基づく、異議申し立て(相談)をしました。鹿児島県障害福祉課(障害者権利擁護センター)、大阪府福祉室障がい福祉企画課に電話。国土交通省、新聞社、テレビ局などにも報告。取材も受けました。結果、バニラ航空は、今回の不手際を認め、早急に改善をしてくれました。

奄美空港施設要件に伴い、奄美空港出発/到着時にターミナルに接続されている搭乗橋をご利用いただけない場合がございます。その際には、アシストストレッチャー(階段昇降器)をご利用いただいての階段昇降となります。事前の確認事項がございますので予約センターまでお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。

ちなみに、2017年11月に、奄美空港では、2本目の搭乗ブリッジが完成予定とのこと。そうなれば、階段昇降の必要はなくなり、より簡単に乗ることができそうです。ただLCCですので、サービスや利用に不安があるなら、JALやANAを利用する方がいいです。