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白夜(1)

2006/07

サンクトペテルブルグ / ロシア


ロシアの洗礼 

フィンランド航空 ヘルシンキ乗換え、サンクトペテルブルグ空港に着いたのは夜の9時半。しかし白夜のため、空は明るい。空港にはブリッジはなく、飛行機に階段がつけられるが、車イス昇降車は用意されていなかった。あるいは存在しないのかもしれない。 屈強なロシア人2名が機内用車イスを何事もないように担ぎ上げ降ろしてくれた。機械なんてない、人力による介助。ロシアに来たのだと痛感した。

今回の旅は、おばさま7名と一緒。おばさま達は飛行機の下で、力強いロシア人を唖然と眺めていた。入国審査に50分。観光客が多いのに、窓口が少ないから時間がかかる。電気がついていないロビーは、やっぱりロシア。飛行場を出て、タクシーを探すが乗り場がない。困った。それっぽい男性に尋ねてみると、65ドル!とのこと。タクシーはメルセデスの黒塗り。つまり白タクのハイヤーというわけ。豪華な車は必要ないから値引きしろといっても、一切交渉の余地なし。ヤクザの独占市場。

「タクシーが50ドルした!」というネット情報はあった。現地旅行代理店の送迎は65ユーロだった。空港の敷地内から出て、路上で車を拾って交渉すれば30ドルぐらいで可能かもしれないが、夜の10時半。1台に4名乗るから渋々と、65ドル×2台を支払った。悔しい。

ロシア初のサミットを1週間前に控えたサンクトペテルブルグ。通りにゴミ一つ落ちていなかった。路肩には花も植えられている。治安がいいのは嬉しいが、ホテルを予約するのに苦労した。

やっと取れたホテルは3つ星の古い国営ホテル。入口には15段ほどのでっかい階段。他に入口はなく、おばさま7名が交代で車イスを担いでくれた。案内する立場なのに介助されるとは情けない。3つ星ホテルなのだからスロープ作ってよ。夜の11時。部屋の窓から白夜の太陽に照らされる街が見える。あまりの美しさに疲れもぶっ飛ぶ。


ペドロドヴァレッツ

冬の宮殿「エルミタージュ」現美術館の裏からの高速船は、朝の10時始発。船乗場には階段もあるし、時間つぶしもしなければならず困っていると、タクシーの客引き。提示してきた値段は高いが、8人分の船代よりは少し安い。船の旅情も捨て難いが、段差もあって大変だし、帰りはホテルまで送ってくれるので、ワンボックスタクシーにて夏の宮殿ペドロヴァレッツへ。途中渋滞などもあり、1時間弱の長旅。

夏の宮殿は、フィンランド湾の南側に作られている。船でそのまま入れるように港がある。広大な森が広がり、道が交差するところには、装飾が施された噴水や彫刻。大宮殿の前には、世界一豪華な噴水。金の装飾が眩し過ぎる。なんという王家の散財でしょうか。

あまりにも広い敷地。駆け足で見て廻っても2時間はかかる。3時間あればOK。宮殿内は、冬の宮殿「エルミタージュ」を見るからパス。庭園内の美術館も入場料が高いからパス。歩いているだけで、散策するだけで、気持ちがいいです。階段横にはスロープもあります。

子ども達が遊ぶ噴水。突然石の間から水が飛び出てきます。ドキドキしながら歩くところ。実は人が後ろで操作しています。仕掛け噴水が、あちこちにあって遊び心が満載です。

白杖(盲目)のアコーディオン奏者がいました。彼女は一人で一生懸命に弾いていました。多くの演奏家が観光客からのチップを稼いでいます。音楽のレベルは非常に高いロシアです。

 


エルミタージュ美術館

世界屈指の美術館として有名だが、噂に優る素晴らしさ。今まで人間が作った建造物で最もスゴイと思ったのは、ヴァチカンにあるサンピエトロ寺院。カトリックの総本山であるが、建立の際、建設費を捻出するために教皇が免罪符を発行したが、それをきっかけに宗教分裂。プロテスタントができた。だからプロテスタントの教会は質素である。エルミタージュ美術館は、サンピエトロ寺院に次ぐ、スゴさ。圧巻な豪華さ。

収蔵作品もオールドマスター(ダヴィンチも!、カラヴァッジョも!)から、印象派(モネ、ルノワール、ゴーギャン、ゴッホ)、20世紀のピカソ、マチスと驚かされるが、なんといっても箱が素晴らしい。エルミタージュは、ロシア王朝の冬の宮殿として使われていた。どれだけ豪華にすれば気が済むのか。金銀財宝で彩られた部屋。目が痛くなるほど輝いている。そんな部屋が一つではない。何十、何百とあるのだから、信じられない。

 

1917年 ロシア革命が起こり、ソビエト連邦が誕生したが、あまりにも豪華なエルミタージュ宮殿をみていると、ロシア王朝がいかに散財していたのか、人民をないがしろにしていたのか、社会主義が誕生した理由の一つを見た気がします。 

  

一応バリアフリー設備もありました。エレベーターがあります。正面入口にはスロープもあり。一部展示室へのリフトはどうやって使うのか?面倒です。形だけのパフォーマンスでしょう。


マリンスキー劇場

ロシアといえばバレエ。最も有名なマリンスキー劇場のチケットがインターネットで買えた。「車イス席はないのか?」と尋ねたが、「車イス用の席は無い」との返事。なるべく段差のなさそうな1階のバルコニーを購入することにした。8人定員なので、我々グループで占拠できるのでバッチリ。

予想はされたが、バリアフリーの配慮が何もしていないのには驚いた。世界的な劇場なのに。。。内部は段差ばかりで困ったもの。職員も何も手伝わない。ロシアである。

演目は「バプチサライの泉」。古典的な踊りの一幕。様々な民族の踊りがある二幕。物語をじっくりみせる三幕。夢の世界にタイムスリップ。純粋に肉体だけで表現するバレリーナに感動。バリアフリーがなくても、こんなに素晴らしい演目を見れたら幸せである。

劇場からの帰り、おばさま達の歩く足も軽快に。Yさんが、プリマドンナの真似をして、踊りながら歩いていると、後ろからきたロシア人女性(30歳ぐらい)が、持っていたバラをYさんにプレゼント。もらったものかもしれないが粋なことをしてくれる。 楽しい夜となった。


市内散歩

サンクトペテルブルグ市内には、かつての繁栄を感じさせる変わった建築物がたくさんあります。屋根にガラスのドームがある建物。彫刻も素敵です。

いかにもロシアを感じさせる、ロシア正教会「スパース・ナ・クラーヴィ聖堂」。ゲーム「テトリス」の世界、パルナスのCM世界です。カラフルな装飾に丸い屋根。独特です。

橋の上で、のんびりとその聖堂を描く画家に、美女軍団はコミュニケーション。 

ヴァチカンのサンピエトロ寺院を模した「カザン聖堂」。とても大きく見所満載です。入口の階段には、簡易スロープがありました。一人の手助けがあれば入退場できます。使いやすくないですが、無いよりはマシ。多くの人が出入する教会だからバリアフリー対応。一般的に、ロシアのバリアフリーはとても遅れています。ほとんどのビルは段差だらけ。スロープ無し。


フィンランドへ

サンクトペテルブルグから、列車でフィンランドへ移動。フィンランドからロシアへの切符はインターネットで買えても(フィンランド鉄道サイトより)、ロシアからのチケットは買えない。現地で手配することに。

ところが、出発駅であろうフィンランド駅(到着地が駅名となっている)に行って、切符を購入したいと尋ねても、皆が無愛想。ロシア語もわからない。困った。困った。通常の切符売場では買えないらしく(国際線だから?)、ちょっと離れたキレイな建物へ移動。そこでようやく乗りたかった日時の特急券を買うことができた。切符入手まで1時間以上かかった。

出発当日、早めに駅へ行くことにした。なぜなら切符購入の際にホームを確認できてなかった。国際線は別のところにホームがあると推測された。リスク管理である。

ホテルからタクシーで、フィンランド駅に到着。降りてすぐ近くの人にホームを尋ねた。すると横から、客待ちのタクシー運転手が割り込み。切符を見せろという。彼は切符を見るや「ラドフスキー駅」と言う。そして俺のタクシーで移動しろと。

確かに、切符売場の人は地下鉄を何度も示していた。この駅ではなく地下鉄でラドフスキーへ移動しろと言いたかったのだ。ホテルからのタクシー運転手も、ラドフスキー駅か?と尋ねられ、何度もフィンランド駅だと確認した。

乗車駅を間違えていた。

持参していたガイドブックの地図コピーには、市内に駅が5つ書かれていた。モスクワ駅、ワルシャワ駅、バルチースキー駅、ヴィチェプスク駅、そしてフィンランド駅。フィンランドに行くのは、フィンランド駅だと思い込んでいたが、実際は地図の外にあるラドフスキー駅が国際列車の発着駅。どうりで切符を買うのに苦労したわけだ。

あわてて、ラドフスキー駅へ移動する。タクシーのおっちゃんは俺がピストン輸送するという。時間はないが彼を信用して、4名先に行ってもらい、残り4名はもう一度迎えに来てもらって移動。タクシーはオンボロなのに、恐ろしいほど飛ばしていた。ブレーキも甘くスリップしながら。日曜の早朝ということもあり道路は空いていたので良かった。スリル満点。こわすぎ。言い値は高かったが、支払いのときに強引に少ない料金を支払った。それでも良い儲けなのだから。

列車出発15分前に到着。ちょうど乗車が始まるところだった。間に合って良かった。ホームには長いスロープがあり、車イスでも快適に移動できた。最高です。さすが新しい駅。

電車とホームの段差も、ほとんど無い。欧州の列車は1メートルぐらいの段差があることが多いので心配していたが、これなら一人で乗れる。車内も広く、コンパートメントに移り座って、針葉樹の森が続く景色は単調も快適な旅。

駅の間違いには、ご注意を! 時間に余裕を持って移動するのは大切なことを改めて再確認しました。


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