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タクシーブルースに揺られて (4)

2006/08

カミオントラック / マダガスカル


カミオントラック 48時間

マダガスカルの中央部アンチラベからの夜行タクシーブルースで、モロンダバに着いたのが早朝。海岸線沿いの町で、道路は舗装されていないので砂地ばかり。車イスで歩けないので困った。現地人の泊まる安ホテルしか選択できず意気消沈。臭くて、暗くて、蚊帳もない。

次の目的地トゥレアールまでは、乾季のみ運行のカミオントラックバスに乗る予定であった。到着したタクシーベー(バス乗場)で尋ねると、週2便しか運行していないとのこと。翌日が次の出発日。その次は5日後であった。砂の町で5日間も待てない。来た道を戻るのは面白くない。体力的にきついが翌日のバスを予約した。ここが旅の正念場だと気合を入れた。 

トゥレアールまでのカミオントラック。集合時刻は朝の8時。先人が書いたネットでの旅行情報によれば、出発は12時ぐらいになるらしいが、本当だろうか?置いていかれても困るし、車イスなので介助してもらったりするので、朝8時にバス乗場へ向かった。

カミオントラックは既に来ていた。整備点検をしていた。バス乗場には多くの人が群がっており、日陰を探して座り込み、くつろいでいた。さすがに乗客ではないだろう。こんなに多くが乗れるわけがないと考えていたが、甘かった。座り込んでいる人達は全て乗客だった。彼らも時間に遅れることなく集合していた。

順番に、天井に荷物を積み込んでいく。工具、農作物、家具など、ありとあらゆる荷物がある。荷物代は無料なのだろうか?とんでもない量の荷物を持つ人がいるが気にもとめていない。それにしても丁寧に一つずつ積み込んでいく。全ての荷物が積み終わるまで、なんと3時間もかかった。

丁寧な作業は、道路のないところを走るため、積荷が落ちないようにするためでもあるのだが、最も大切な理由は、無政府地域を通るため山賊に奪われないようにするため(このときは知らなかった)。簡単にほどけないようにと、網の目のように縛り上げていた。

座席は予約制だが、座席割りに1時間かかった。私は最初に手伝ってもらいながら乗り込んだ。バスの座席は幼稚園のバスみたいに小さい。ボロボロの補助席もある。 日本では4人がけ+1人補助席?で最高5名が定員だろうが、ここに大人7名が座る。さらに子どもが1名、2名加わる。ダークダックス状態。肩は並行には出来ない。皆でスキンシップ。子どもは膝の上に乗ってくる。 くんずほぐれつ。

私は1席分の値段を払っているのに(2席で3名座るのは当たり前)他の人が強引に割り込んでくる。 週に2便だから、乗りたい人を全部詰め込んでいるのかもしれない。狭いのには参った。でも、揺れたときに体が動かないのはいい。ぎゅうぎゅうすぎるのも得があるのだ。

 

窓側の席だったので、景色が見れてラッキー! と思っていたら甘かった。 枝が窓から入ってくるのだ。森や茂みの道なみ道を走るから容赦ない。ちなみに窓ガラスはない。

ビニールシートがあるので、たらして防御するが、それでは暑いし景色は見れない。ずっとビニールシートを閉めているのも苦痛である。開けても地獄。閉めても地獄。 

ちょっと木々がないと思って、ビニールシートを持ち上げて景色を眺めていたら、急に枝が襲ってくる。何度か顔に枝が当たり恐怖心に襲われる。ところが、たまにすごい景色が現れる!から開けたくなる。そう、バオバブの群生地を通るのだ。すべての種類のバオバブを見ました。感動です。

道なき道は、川の中をも通ることになる。橋はない。乾季で水位が落ちているから通行可能なのだ。深さを示すための棒も川に立っている。なんともワイルド。

しばらく走ったかと思うと、またもや停止。窓から眺めると、前方にぬかるみ地帯があった。運転手の他に3名のスタッフがいる。車両整備、道の安全確認、荷物の積み下ろし、乗客整理、等々。スタッフ達が道を確認しながら、最も安全なルートを選び、運転手に指示していた。こういったトラブルのときは、トイレの時間にもなる。窮屈な車内から乗客は外に出て、リラックスする。

 
干上がった川や湖を幾つも越え、野生のバオバブも群生する森の中をひたすら進んでいく。やがて日も暮れ、夜になった。まっくら闇のため景色を楽しむこともできなくなった。19時。またもやカミオントラックが停止した。後輪の一つがパンクしていた。修理に1時間半。

20時30分。ようやくパンクも直り再出発。お腹が空いた。23時に夕食休憩。電気も何もない大自然のどまん中。道沿いの民家(契約しているのだろう)での食事。ずっと車内にいた私も、大変だけどトラックから降りて外に出る。気持ちいい!

天の川きらめく星空の下、チキンカレーとライス。食後には玄米茶(飯ごうに残った米で作る)。ご飯は食べ放題。料金も格安。安食堂の値段。50円以下。マラガシー(マダガスカル人)は少ないおかずでも、本当に米をたくさん食べる。
家族総出で、子ども達も一生懸命に働いていた。偉いですね。

食後には、コーヒーも提供された。炊いた飯ごうに水をいれ沸騰させて作るため(飯ごうの洗浄も兼ねる)、米粒入りのコーヒーだった。

腹も満たされ、心も落ち着く。他の乗客も気分がよくなったみたいだ。和やかな雰囲気の車内に。そして、これからの夜行道中を耐えるためか、女性達を中心に車内で大合唱が始まった。
 

 
これぞ旅の醍醐味。予想外のことが起きる楽しさ。ぎゅうぎゅうバスの中、深夜の大合唱。次から次へと色んな歌が合唱される。とても嬉しくなったので、私も御礼にと日本の歌「ふるさと」を彼らに歌った。でも、あんまり受けなかった。拍手喝采はあったが結局、1曲しか歌えなかった。聴くより歌いたいらしい。1時間も合唱が続くと、疲れたのか、眠る人もでてきたのか、歌う人数が減り、やがて就寝タイム。激しく揺れる車内で、体を密着させながら、目をつむる。

早朝5時、まだ暗いが、町に到着したようだ。ひょっとして!と思ったが、マンジャという町であった。町というより村かもしれない。陸の孤島。周囲に道はないので、船が物流の中心なのであろう。海から川を上ってくるのだろう。

持っているガイドブック「ロンリープラネット」の地図でマンジャの位置を確認した。なんてことだ。丸一日経過したのに半分も来ていなかった。まだ3分の1しか走っていないというのか!

確かに2日間のカミオントラックと聞いていたが、本当なようだ。直線距離は遠くはないが、道なき道を走るし、トラブルも多い、かなりの時間がかかるようだ。マンジャから、トゥレアールまでの道が、良い道であることを願うしかない。

マンジャでは、4分の1ぐらいの乗客が降りた。これで車内が空くかと思ったら、同じぐらいの人数の乗客がまた乗ってきた。うーん過酷な旅。荷物の積み下ろしなどで1時間半の停車。6時30分に出発。

11時に兵士のいる村(ゲリラ対策?)を通過し、13時に大きなマンゴキ河にぶつかった。乗客は皆降りていく、そして河にむけて歩き出す。何人かは水浴びをして体を洗浄している。砂地を進むため、車体を軽くするために乗客は降りなければならないのだ。車イスの私はもちろん車内に一人残ったまま。これをとばかりに座席に横たわり、背骨を伸ばす。

渡し舟で河を渡る。自動車やトラックがたまに通るので商売としている。河を渡り終えるまで2時間。渡った先には集落があり、そこで昼食タイム。先に渡っていた乗客たちが空腹を満たしてた。私もスタッフに頼んで車内に食事を運んでもらう。

 

マダガスカルの食事は美味しい。基本は、ぶっかけご飯。おかずが少々油っぽくて、ご飯によく合う。食後には、定番の玄米茶サービス。炒った米をそのまま煮たもの。これで元気満点です!

 

昼食後、至福の瞬間が訪れた。素晴らしいバオバブの群生地を通るのだ。ガイドブックにも乗っていない秘密の場所。道が整備されているので、窓から枝が入ってくることも少ない。ビニールシートを片手で持ち上げ、必死に外を眺め、バオバブの偉大な姿を焼き付けることにする。

揺れる車内。写真を撮るには両手で支えなければいけないが、下半身不随の私は揺れまくり。片手で撮影するしかないが、うまく撮れない。心にやきつけるしかありません。

2日目の昼食後は、1日目に比べると快適な道。集落も多い。川がないので交通も整備されていた。きれいな夕日を眺めながら、トイレ休憩。一人で乗っている子どももいて、皆とてもたくましいです。揺れる車内で泣いたり、ぐずったり、ひねくれる子どもは一人もいませんでした。日本とは違います。

朝3時。トゥレアールに到着。真っ暗闇で行動することはできない。夜明けまでタクシーベーで寝ることに。地面は冷たく固いので親切なスタッフが私にマットを貸してくれました。ラッキー!他の乗客達は地面にごろ寝。私は薄いマットを敷いてごろ寝。一緒に就寝です。

朝6時30分。夜明けとともに荷物渡し開始。冷えたためか、お腹が痛くなったので、人の少ないところを探して、腰かけられる岩を探して野グソ。早起きしてきた住民に怪しまれたが、漏らすよりはマシ。とにかく道程で便意がこなくて良かったです。

全ての荷物が積み下ろされたのは朝7時30分。1時間かかりました。これにて48時間の旅は終了。道がないところを走ったり、川を越えたりするから時間がかかりました。トイレや食事の休憩はありますが、寝るための休憩はありません

結局カミオントラックから降りたのは1日目の夕食だけ。その他の食事は座席に運んでもらいました。トイレは皆が降りたときに、こっそり座席で尿を容器にとって、窓から捨てました。皆が降りたときは一人で座席に横になり休憩できたのが救いでした。


バオバブ写真

トゥレアールの町で、日本人の青年Y君を見つけました。ずっと日本語を話していなかったので、強引に声をかけ、夕食を共にすることに。その後、彼は逆ルートで一部の道ですが私と同じ場所を通り、風景を写真に収めています。偉大なるバオバブの写真を、ご堪能ください。


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